短い電子音ひとつでヤツとの繋がりを切ってやった。
一緒に酒を飲んでいた澪は、好奇心を孕んだそのまん丸な目で俺を見る。
「蓮さん?」
「うん。ちまいののお泊まりお持ち帰りコースに動揺大絶叫」
俺のため息にケラケラと笑う澪は思い切り他人ごとなのだろう。
酒も入ってかその笑顔は幼い。
一応巻き込まれている俺としては他人ごと+面倒+αなんだけどな。
「あーあ。雛だってもう二十歳なんだから経験くらいあるだろうにね~」
「樹は手早いけどちまいのの事は大事にしてるみたいだから手出すかどうかはわかんねぇけどなー」
「あー樹今回まだ出してないらしい」
そういって俺の皿から酒の当てにと作った豚の生姜焼きを一口。
お前自分の食べたからって……。
俺も仕返しに澪の皿から出汁巻き卵を一切れとる。
ちなみに澪お手製で自分の分しか作らなかった。
俺はお前のも作ったのに。
「よくやるなぁ」
微妙な味の卵をもふもふ咀嚼しながら時計を見ればそろそろ手を出すにはいい案配な時間。
澪もつられて時計を見つつカクテルを一気に飲み干した。
次の瓶を開けて頷く。
「だよねー。僕ムリ」
酒のせいか今日は随分開けっぴろげに話し出す澪。
「お前らがやってるとこ想像してもレズにしか見えねー」
「突っ込むもんと突っ込めるもんがあったらレズじゃない」
からかってやったら半眼できっぱり言い放った。
コイツ完全に酔ってる。
やべ。また飲ませすぎたかな。
その頃の樹&雛 in樹のマンション
「よーし行くぞだいちゃん!やるぞ!私やっちゃうぞ!」
「よっしゃこーい!」
「とやーッ!!!…………ババだぁぁぁああ!!」
「やったーまた俺の勝ちー!」
「うぅ……またしても負けた……。これでババ抜き32連敗だよ」
「へっへー!雛弱ーい!」
「もー!次こそは!!」
ババ抜き33回戦目を迎えつつ夜は静かに、そして健全(ある意味不健全)に更けていくのでした。
僕の運転する車の助手席で若くんが意味の分からない事をつぶやく。
えーと……。
夕「…………何語?」
若「……は?」
夕「いや僕のセリフだから。さっきのなに?」
若「……俺なんて言った?」
夕「まぶたい」
若「…………」
夕「…………」
若「……あぁ、眠たいと眩しいが混ざった。俺のグラサンどこ」
夕「勝手に縮めないでよ~」
若「だって西日キツい……つかお前の車煙草くせぇ」
夕「え、最近吸ってないよ?」
若「灰皿。かたせよ」
夕「あぁごめん」
若「つか禁煙っつったろ!」
夕「ごめんって~」
若「お前一週間バツとして事務所のトイレ掃除な~」
夕「えぇ!?そんな!」
若「ばっか!前見ろ前!」
夕「あわっ!わ!」
若「……もう一週間追加な」
夕「そんなぁ」
でも律儀にやってしまう僕。
清掃のおばちゃんと仲良くなりました。
「あわっわ!ご、ごめんなさい!」
「なんで目が合っただけで誤るの」
「ふぃひゃ!ほっひぇひひへふ!(痛!ほっぺちぎれる!)」
「日本語喋れや」
「ひゃふ~!(あう~!)」
「ほれ学級文庫って言ってみ」
「ひやれふー(イヤですー)」
「つまらん」
「ぴゃ!」
「お前どうしてこんなとこいるんだよ。どこだか分かってんのか?」
「わ、若さんこそ!ど、どこだか分かってるんですか!」
「二丁目だな」
「二丁目ですよ」
「……」
「……」
「お前こんなとこ用ないだろ」
「若さんこそ…。っは!若さんもしかしてオカみゃ!」
「それ以上言ったらほっぺちぎるぞ」
「ひひへふのふぃひゃー!(ちぎれるのいやー!)」
バス乗り間違えたなんて言えねぇ。
どうせコイツも似たようなもんだろ。
本当に一回言った、それきり口を開かない彼を私は見上げる。
照れて赤くなるでもなく、反応すら見せない私に苛立つでもなく、彼は私を見つめる。
いつもより感情を押し殺したような無表情だが、瞳を見れば、それは酷く不安げではあるが本気なのだと言うことは痛いほど分かった。
決して彼が嫌いだとか、不満があるとかではなくて……。
ただ私には……。
私の返事を聞いた彼は、ふっとそれまで瞳に宿していた不安を消して微笑んだ。
そして兄がするのとは対照的に、優しくくしゃりと髪を撫でつけ
ありがとう
そう言った。
私は何故かその一言に、涙が溢れるのを止められなくなった。
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振られた感が否めませんが一応イエスノーどちらでもいけるように書いたつもり(笑)
環ちゃんがヱータの口説き文句を気に入ってくれたようなので調子に乗ってみたww
樹「あ、俺雛と~♪」
ヱ「俺もその日用事あるんで」
………………。
え……。
「なぁにがその日用事あるんでぇだッ!クリスマスに用事っつったら女しかいねぇだろうがぁ!」
「まぁまぁ若くん落ち着いてよ~飲み過ぎだよ~ひがんでたって始まらないよ~」
「誰がひがむか!!羨ましくもなんともねぇよ!」
「とか言ってホントは寂しいくせに~。ね~チェルシー」(酔ってる)
「どいつもこいつもふざけやがって。大体なんで俺が夕風なんかとクリスマス一緒に飯食わなきゃいけないんだよ(ブツブツ)」
「あ、店員さーんおつまみ追加ぁ!こっからここまで全部ね~」
「ふざけッ!ふざけんなよお前食える分だけ注文しろよ!」
「え~食べれるよ~」
「あーもう!店員さん俺も日本酒追加!」
「若くん飲み過ぎだよ~」
「るせッ!お前は食い過ぎだ」
「えへへw」
「えへへじゃねぇよバカ!」
その頃のヱータ。
「まこ!まこ!早く盆栽展いくぞ!」
「やかましい!栄、アンタ普段の落ち着きはどこいった!」
ちょっと興奮しちゃったヱータさん。
何もクリスマスに女連れで盆栽展行かなくても。